おふくろさんのツルッと甘い艶やかな富倉おもてなしの田舎料理。信州飯山「はしば食堂」

R292を新井方面へと向かい、「はしば食堂」と書かれた看板を頼りに富倉トンネル手前から分かれて曲がりくねった人気のまったくない山道を進みます。

この先にはたして店などあるのだろうかと不安を覚える頃、谷あいに沿って萱葺きの屋根が点在する滝ノ脇の集落に出、「はしば食堂」は道から少し下った昔ながらの田舎家をそのまま使うそば屋なのです。青いトタン屋根が目印。家の裏には湧水が音をたてて流れています。

新潟県妙高市長沢と信州飯山を結ぶ富倉街道沿いの県境に位置する富蔵地区に伝わるご当地そばが文字通り「富蔵そば」です。麦の栽培ができない富倉では、つなぎに「オオヤマボクチ」という葉がゴボウによく似たキク科の野草の繊維を使い、手間ひまのかかる昔ながらの製法で打つことから「幻のそば」と呼ばれます。

メニューは富倉そば大盛り1200円・並800円と笹ずしが5個600円のみですがそばを待つ間、居酒屋の付出し200円のような感覚で小鉢に入った山菜(ウドやイタドリ等)や野沢菜漬け、かぼちゃの煮物など心づくしの田舎料理が味わえます。

かつおや昆布だしを使用した濃い目のそばつゆでいただくおそばは、富倉そばには珍しく色白で透明感のある麺には艶があり風味が良く、なめらかなツルツルの喉越しと強いコシが特徴。2mもの長い麺棒を操り新聞の字が透けて読めるほどに薄く、かつ畳2枚分の広さにのしたそばは美味い。

「笹ずし」は戦国時代から伝わる野趣豊かな郷土料理で、富蔵地区の人々が上杉謙信に「野戦食」として贈ったともいわれ「謙信寿司」とも呼ばれます。殺菌効果のある笹の上に酢飯を置き、ゼンマイ・シイタケ・鬼グルミ・紅ショウガ・鰹節などをのせた素朴な山里の味です。木島平村の幻の米に餅米15%程いれているのでモトモチ感があります。笹ずしを食べる時は箸を使わず、葉の根元のほうから笹を下に曲げて、笹のさわやかな香りとくるみの食感を味わいながら食べて最後に紅生姜をいただきます。

二間続きの居間が食堂で、壁には訪れた有名人のサインや写真が並びます。緒方拳や秋本奈緒美、石倉三郎等が壁にサインしています。